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外国子会社配当益金不算入制度の導入と間接外国税額控除の廃止について

外国子会社配当益金不算入制度の導入と間接外国税額控除の廃止について

 

日本の平成21年度税制改正[1]により、2009年4月1日付けで、外国子会社[2]からの配当を日本の親会社の所得に算入しない、そして、現行の間接外国税額控除制度を廃止する、という変更がなされます。

 

この記事は、改正による米国子会社への影響を解説いたします。

 

間接外国税額控除とは


外国税額控除制度は、外国で払った法人税額[3]、日本の法人税額[4]から差し引くことで、二重課税を防ぐための制度です。間接外国税額控除は、外国の子会社が外国法人税を払う場合でも、まるで日本の親会社が直接所得を得て外国法人税を払う場合と同等の結果になるように設けられた制度です。これにより、日本の親会社は、外国子会社からの配当に外国法人税を加えた額(日本の親会社が直接外国で得たと仮定した場合の税引前所得)を所得に含めて日本の法人税額を計算し、外国法人税を日本の親会社が直接払ったと見なして、税額控除することができます。


高税率国からの配当について、無制限に税額控除を認めてしまいますと、日本の税収が確保できないため、税額控除に限度を設けてあります。限度額の計算についてはここでは述べませんが、外国源泉所得を合算したものに日本法人税の実効税率を掛けたものが限度額の目安となります。

 

変更内容


改正により、外国子会社からの配当額の95%は、日本の親会社の益金に含まれないことになります。これにともない、間接外国税額控除も廃止されました。配当にかかる源泉税は現行の法人税法では外国税額控除が認められますが、改正により、外国税額控除とすることも損金とすることもできなくなります。

 

改正による主な効果


改正は、様々な効果をもたらしますが、主な効果を以下に列記します。

 

1 低税率国の会社からの配当[5]は、日本の親会社で課税されないため、通算すると日本の親会社の税負担が減ることになります。

 

2 高税率国の会社から配当も、日本の親会社で課税されない一方、子会社の払った高率の所得税を日本の親会社が取り戻せないことになります[6]。

 

以上から、改正は、一般的な見地からは、低税率国の子会社が所得を得る場合に有利となり、高税率国で子会社が所得を得る場合不利となり、従って、高税率国の子会社が未処分利益を持つ場合2009年3月31日までに配当し、低税率国の子会社が未処分利益を持つ場合2009年3月31日まで配当をしないことが望ましいことになります。

 

高税率国や低税率国の判定は、外国の法人税の実効税率が日本の法人税の実効税率より高いか低いか、が一応の目安になります。

 

米国子会社への影響

 

米国子会社(日本法人が議決権10%以上保有するもの)の場合、米国の実効税率と日本の実効税率の差は少なく、一般的な見地からは、改正による影響は比較的少ないと予想されますが、2009年3月31日までに配当を計画されている場合、または、米国会社の未処分利益(正確には、米国税法上の概念であるEarnings & Profits)が大きい場合、改正による影響の検討をお薦めいたします。

なお、特に以下の場合には改正による影響の検討をお薦めします。

 

1 米国会社がメキシコや低税率国に会社を所有する場合

 

現行の間接外国税額控除制度では、米国会社が低税率国の会社から受け取った配当が米国で課税されても、米国会社が日本の親会社に配当を払った時点で、間接外国税額控除で取り戻すことが可能でしたが、改正により間接外国税額控除がとれなくなるため[7]、米国で追加で払う税金が回収できず無駄になってしまいます。この場合、低税率国の会社から米国会社への配当を保留し、日本の親会社が直接その低税率国の会社を所有する形態への変更を検討されることをお薦めします。

 

2 日本法人がメキシコや低税率国に支店を有する、もしくは、米国支店の実効税率が今後も低いと予想される場合

 

改正後も、海外の支店の所得は日本の本店の益金に含まれ(直接外国税額控除は存続します)、改正により得られる低税率のメリットを得られません。メキシコや低税率国に支店を有する場合、米国支店の実効税率が今後も低いと予想される場合、支店の会社設立を検討されることをお薦めします。

 

3 外国会社が日本の親会社に役務対価、利子、ローヤリティーを払っている場合

 

改正後も、外国会社からの役務対価、利子、ローヤリティーは、日本の親会社の益金に含まれ、日本の実行税率が該当します。一方、外国会社からの配当は、改正により日本の親会社の益金に含まれませんから、役務対価、利子、ローヤリティーと同様、一度だけの課税となります。外国会社が低税率国にある場合、配当の方が税率が低く、役務対価、利子、ローヤリティーよりも有利になります。配当の二重課税を回避するために、外国会社の払う役務対価、利子、ローヤリティーを最大化というタックス・プランニングを行っている場合、特に、外国会社の所在地がメキシコのような低税率国である場合、日本の親会社と外国会社の取引関係を早急に見直す必要があります。タックス・プランニングの目的ではないものの、日本の親会社からの借入比率が高い外国会社が多く見られます。この場合は、負債と資本の比率の見直しをお勧めします。なお、検討の際には、日本と子会社の所在地の移転価格税制(以下、改正に関連する注意点参照)そして子会社の所在地の過少資本課税(米国 Earnings Stripping Rule)を考慮することが重要です。

 

 

改正に関連する注意点

 

1 日米租税条約の恩典を得るための書類整備

 

上述のように、改正により、配当にかかる外国源泉税は、日本の親会社で、外国税額控除や損金となりません。従って、租税条約による配当にかかる源泉税の軽減措置は一段と重要なものになります。米国会社からの配当については、日本の株主からW-8 BENの取得や配当の報告(Form 1042)や日本の株主によるTreaty Positionの開示(Form 8833)の作成と提出、Limitation of Benefit要件の確認、が重要になってきます。

 

2 適用除外要件の確認

 

内国法人等の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例により、低税率国の会社の所得が日本の親会社の所得に合算されてしまいますと、改正により得られる低税率のメリットが失われてしまいます。この特例の適用除外要件を満たすかどうかの再検討が必要と思われます。

 

3 移転価格税制

 

日本法人と低税率国の関連会社の移転価格が調整されることにより、日本法人の所得が増えることで、増えた分について、改正によって得られる低税率のメリットが失われてしまいます。従って、日本での移転価格税制の遵守が一段と重要になってくると考えられます。一方で、低税率国の関連会社の機能・資産・リスクを増やすことで、移転価格税制に沿った形で、日本から低税率国へ所得を移転し、グループ全体の税負担を軽減する選択肢も考えられます。

 

4 配当に関する書類整備

 

外国子会社からの配当を日本の親会社の益金から除外するためには、配当額の計算に関する明細の作成と一定の書類の保存が必要になります。



 


 

 


 

Endnotes:

 

[1] 平成21年度税制改正大綱 http://www.mof.go.jp/genan21/zei001.pdf

[2]外国子会社の発行済株式等の25%以上を、配当義務確定前6ヶ月以上継続して直接に有することが条件です。但し、日米租税条約では10%以上の議決権に緩和されています。

[3] 外国税額控除の対象となる外国法人税は、所得を課税標準とする税もしくそれに代わる税に限定されます(法人税法施行令第141条)。米国の州・地域の法人税で、売上や資本を課税標準とするもの (売上を課税標準とする税の例 ミシガン州SBT、オハイオ州CAT)は、この外国法人税に含まれず、現行の間接外国税額控除制度では、外国税額控除がとれない、という問題があります。改正により、間接外国税額控除が廃止されますから、米国会社の払った州・地域の法人税については、外国法人税に含まれるか否かの問題はなくなります。

[4]法人税と住民税(住民税均等割り分を除きます)。

[5]内国法人等の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例により合算される特定外国子会社の所得(平成21年4月1日以後に開始する事業年度に係るもの)は、配当により控除することができません。従って、日本の親会社の実効税率により課税されることになります。

[6]現行のルールでは、高率で課税された外国源泉所得と低率で課税された外国源泉所得が合算できるため、高率の外国法人税を取り戻せる可能性はあります。

[7] ひ孫会社以下の払った外国法人税は、現行の制度では間接外国税額控除が認められませんが、改正により、間接外国税額控除が廃止されますから、孫会社が得た所得もひ孫会社以下が得た所得も、この取り扱いの差異がなくなります。

 

 

 

 

以上の内容は、平成21年度税制改正による米国子会社への一般的な影響を解説したものであり、個々の納税者の個別の案件に該当するものではありません。

 

また、以上の内容に税務のアドバイスが含まれている場合でも、そのアドバイスは、(i)連邦税務法典(Internal Revenue Code)に規定されております罰則の回避、または、(ii)この文書にある内容を第三者に提唱・宣伝・推薦、といった目的のためになされているものではありませんし、そのような目的で使用することはできません。

 

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