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顧客への売掛債権はいつ税務上損金できるのか?
米国連邦所得税法上の取り扱いについて
2009年7月6日
はじめに
北米自動車業界の不況の影響で、顧客の支払いの遅れ、顧客の財務状況悪化、顧客の破産申請により、顧客への売掛債権を償却した会社も多いのではないでしょうか。
会計上償却したからといって、税務上も損金できるわけではありません。
では、税務上いつどれだけ損金できるか、となりますと、米国連邦所得税法には、簡単明瞭な答えはありません。
この記事では、米国連邦所得税法上、いつどのように顧客への売掛債権を損金できるかについて、会計上の取り扱いの違いを含めて、解説致します。
個人納税者の場合、事業に関連しない貸倒損失には、より厳しいルールが該当します。この記事は、事業に関連する貸倒損失、主に無担保売掛債権の貸倒損失について解説します。
連邦所得税法のルール
概要
連邦所得税法は、ある税務年度において、債権の全部の価値が失われた場合、その年度において税務上の簿価を上限として貸倒損失が認められます[i]。債権の一部の価値が失なわれた場合、その年度で会計上償却した範囲で、税務当局は貸倒損失を認める場合があります。なお、貸倒損失は通常損となりますので通常益と相殺が可能です[ii]。
価値が失われた場合とは
価値が失われた場合とは、背景事実から、価値が失なわれ回収不能であり、法的手段をとっても回収が見込めない場合、という漠然とした定義[iii]はありますが、明確な基準はなく、実際にどのような場合に価値が失われたかを判断するのは容易ではありません[iv]。下に事例を挙げて解説しました。
損金できる年度
法律の文言に、価値が失われた年度に損金できる、とあるために、納税者に、年度の初めに債権に価値があったこと、そして、年度の終わりに全てまたは一部の価値が失われたこと、を証明する義務があります。
一部の価値が失われた場合 会計上の要件
会計上はそのままで税務上だけ損金をとる租税回避行為を防ぐため、一部の価値が失われたことによる税務上の損金は、その特定の債権について会計上償却された額までに限って認められます[v]。否認された分は、翌年度会計上償却することにより損金が可能ですが、全ての価値が失われた年度よりも後の年度で損金することはできません。税務調査で、後の年度で損金できないとされた場合、全ての価値が失われた年度が時効となっていなければ、その年度の修正申告をすることで損金することが可能です[vi]。
会計上の引当金との差異
なお、金融機関や一部のサービス事業[vii]を除いて、経験値等により計算した引当金を税務上損金とすることはできません。
価値が失われた場合・価値が失われていない場合の事例
価値が失われたかどうかについては、多くの判例がありますが、一貫性に乏しく、明確な指針とはなりません。
以下具体的な事例を挙げ、解説します。
顧客が破産申請をせず、事業を継続している場合
顧客が破産申請をせず、事業を継続している場合は、顧客への売掛債権の価値が失われたことを示す証拠を見つけるのは容易ではありません。
顧客の財務諸表が債務超過であることや顧客の支払いが遅れていること自体は、価値が失われた決定的な証拠にはなりません。
同様に、顧客が融資の財務条項に違反したこと、利息の支払いができなかったこと、顧客の監査報告書にGoing Concernの注記がついたこと(監査人が事業継続性に疑問がある場合につける)、顧客が破産申請の準備をしているというニュースも、それ自体では、決定的な証拠にならないと思われます。
顧客がチャプター11破産申請をした場合
債務者がチャプター11破産申請をした事実は、無担保債権や劣後債権については、一般に、少なくとも一部の価値が失われたことを示すと考えられます。
しかしながら、実務上、チャプター11計画において各順位の債権がどれだけ回収できるかを見ない限り損金時期と損金額の判断は困難な場合が多いのです。
改正連邦破産法により、申請からチャプター11計画提出の時間が大幅に短縮し、申請とチャプター11計画承認が同年度に行われるケースがなる場合があり、損金時期の判定がいくらか楽になりました。
チャプター11計画提出が申請の翌年度になる場合、損金時期を申請の年度とするかそれとも翌年度とするか、という選択が必要になってきます。法人税務申告提出は延長申請により年度末から9ヶ月半後となりますので、年度終了後、チャプター11計画の内容を見ながら、損金時期を判定することになるでしょう。
但し、税務調査において、債権の価値が失われたのは破産申請の前年度であった、とされる可能性もあり、納税者は安心できません。
チャプター7破産申請
顧客がチャプター7破産申請をした場合、資産はオークションでばら売りされますので、回収率は悪く、無担保の売掛債権は申請時点で全額回収不可能と判断できる場合があります。
顧客が事業所を閉鎖し連絡がつかない場合
小規模の顧客の中には、破産手続きをせずに、事業所を閉鎖し、連絡がつかなくなることがあります。顧客の事業所に、資産が残っていない、もしくは、資産があってもすでに差し押さえられているような場合、法的手段をとっても回収の見込みが無い、と考えられますので、その顧客への売掛債権は全ての価値が失われたとすることが可能と思われます。
損金後の回収
価値が失われたとして損金した後、債権の支払いを受けた場合、所得を認識します。但し、支払いを受けたという事実が、納税者の価値が失われたという判断の反証となる場合があります。
繰延税金資産
売掛債権を会計上償却しても、その年度に税務上損金をとれない場合、会計上、償却額に実効税率をかけた額を繰延税金資産とし、会計上の損を減らすことが可能です。但し、欠損が続くような場合等、繰延税金資産とならない場合や前年度からの繰延税金資産の取り崩しが求められる場合があります。
まとめ
連邦所得税法上、売掛債権の損金額と損金の時期の判断は容易ではありません。客観的かつ説得力のある証拠をもとに損金の額と時期を判断し、税務調査に備えることになります。
以上
この記事の内容は、一般的な事案を前提とした法律の解説であり、特定の納税者の特定の事案に該当するものではありません。
この記事に、税務のアドバイスが含まれているとしても、そのアドバイスは、(i)連邦税務法典(Internal Revenue Code)に規定されております罰則の回避、または、(ii)この文書にある内容を第三者に提唱・宣伝・推薦、といった目的のためになされているものではありませんし、そのような目的で使用することはできません。
[i] 税務上所得が認識されている場合に限ります。従って、借受金(Deposit)のように所得が認識されていない場合には、損金となりません。
[ii] 事業に関連しない債権の貸倒損失は、譲渡損となり、通常益と相殺ができない場合があります。
[iii] Treasury Regulations §1.166-2(a),(b)
[iv] 金融機関の融資の貸倒損金については、より緩やかな基準がありますが、この記事では、一般的なルールを解説しています。
[v] 全部の価値が失われたとする場合、会計上の償却は要件ではありませんが、税務調査の結果、失われたのは全部ではなく一部の価値である、とされた場合、会計上償却していないと税務上の損金が認められないことになります。
[vi] 修正申告できる期限は通常よりも長く、税務申告時(延長申請前)から7年後または税金を払った日から2年のどちらか後の時点までです。
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